３．はやくもすぐる いくじゅうり
「マンカスー！！」
ゴミ捨て場の入り口から、白と茶色の猫が転がるように駆けてくる。いつもの古タイヤの上でお兄ちゃんに甘えていた仔猫たちが振り向く。
「あれ？ タンブル」
「どうしたの、慌ててー？」
「大変大変大変大変なのー！！！」
なにやらパニックしているタンブルブルータスは何を言いたいのかよく分からなかったが、とにかく大変らしいことはよく分かった。
「落ち着きなさい。何があったのか、落ち着いて話して」
マンカストラップが宥める。
「お、落ち着けるような状況じゃ、ああああどどどどどどうすればいいの〜〜〜」
「おいおいおい……」
「タンブルどうしちゃったの〜？」
他の仔猫たちは呆れて見守るばかりであった。
「…ねえ。タンブル、パウンどうしたの？ さっき一緒にいたよね？」
ふとミストフェリーズが呟いた。
それを聞いた瞬間、タンブルの顔が引きつった。
「……そうだよ！ パウン！！ パウンが！！」
「パウンがどうしたの？」
「タンブル、スキンブル追っかけて駅の方に行ったんでしょ？ パウンも一緒だったんじゃ……って、まさか…」
「ミスト、何か知ってるのか？」
「さっき、タンブルとスキンブルが喧嘩してて、スキンブルが列車の時間に遅れるって逃げてって・・・タンブルは追いかけていったんだよ。パウンもいたから、お兄ちゃんについて行ったと思ってたんだけど」
「なるほど。タンブル……何があったのか俺としてはあまり訊きたくないんだけど、とりあえず報告してくれるか？」
「あのマンカス、僕何となく見当つくんだけど」
「俺も付いてる。しかし、見て見ぬふりをするわけにはいかないだろう」
「……タンブル…」
「大変だな……」
ふたりだけ分かってしまったマンカスとミストは、しみじみと気の毒そうにタンブルを見つめた。
「何だよー、何でミストだけ分かるのー？ 教えてよタンブルー」
「あたしも知りたいー」
子どもたちの勝手な声に頭を抱えていたタンブルは、とりあえず彼らを無視してマンカスとミストにだけ話しかけることにした。
「…………大体分かってるとおりだと思うんだけど……パウンが…」
「…………………スキンブルと一緒に列車に乗って行っちゃった………？」
「……………………………………そうなの………………………………………………」
「………………………………………………………………………………………………………………」
「どうするんだぁあっ！！」
「どぉしようっ？！」
「…………パウン……何か迷惑の範囲が広がってるねー」
「ミスト…しみじみ言わないで…」
タンブルブルータスはさめざめと泣いた。
「…タンブル大変だよねー」
「でもどうすんの？ 列車ってさ、確かとっても遠いところまで行っちゃうんでしょ？ 帰ってこれるのかな」
「さらりと言うなぁああ！」
薄情な友人達の言葉に叫ぶタンブル。
「いいから……タンブル、とにかく落ち着きなさい。ここで騒いでも多分どうにもならないんだから、落ち着いて考えないと」
マンカストラップは常識的な意見を述べたが、それがあまり意味があるとは思えないのも事実であった。
「スキンブルが乗ってる列車なんだろ？ だったら大丈夫じゃないのかな。あいつがいるんなら、ちゃんとくっついてれば帰ってこられるだろ」
アロンゾがちょっと前向きなことを言った。
「うーん…そう考えればちょっとは安心できるけど…」
「でも、じゃあ帰ってくるのっていつ？」
「あさって…だよね。いつもそうだし」
「だよな…」
タンブルはやっぱり頭を抱えた。
「あああああっパウン！！ 頼むから無事帰ってきてくれー！！」
とりあえず、スキンブルはどうでも良いらしい。
「お腹いっぱいになったかー？」
「にゃあ！」
「みゃあ〜」
ごはんを食べ終えた２匹の猫は仲良くいいお返事をした。既に兄弟疑惑はどうでも良くなっている。
「ごはんおいちかったのー。ぱうんね、おうちのごはんいっつもおねえちゃんたちののこりものだから、かんづめたべたことなかったの」
「僕も、おうちのごはんはそうだよ。缶詰食べられるのはここだけなの。いつもだったら嬉しくないけどたまには美味しいでしょ？」
「うんっ！！ ぱうんおいちいものだいしゅきなの」
「僕も好きだよー。じゃあ、僕これからお仕事の続きに行くから、パウンここにいてね」
「おしごとー？ しゅきんぶるおにいちゃんなにしゅるの？」
「僕はここでお仕事してるの。パウンはお仕事知らないでしょ？ 結構大変なんだから、パウンはここで遊んでてよ。おじさん、またごはんくれるかもだよ」
「ごはん…」
パウンのお目目がきらきらときらめいた。
「わかったの。ぱうんまってゆの」
「まっててねー。じゃ、スキンブル、列車の見回り行ってきまーす！！」
「あ、スキンブル、見回り行くのか？ じゃあ、弟の面倒は見てるから頑張ってなー」
「よろしくねー」
「みゃ〜〜。いってらっしゃいにゃの〜」
…こう書くと一見会話が成り立っているように見えるが、実際は人間語と猫語なので、それぞれに勝手なことを言っているだけである。種族の壁を超えた美しい友情と言え…るのだろうか。
エネルギー補給を完了したスキンブルシャンクスは元気に出て行った。「おっしごっと、おっしごっと」と歌いながら。小柄な体のくせにやたらとよく食べるのは、このハイテンションを維持するためともっぱらの評判である。
「よろしく頼むぞスキンブル〜」
「にゃ〜！！ おまかせくっださーい！！」
元気だ。
「にゃ…しゅきんぶるおにいちゃんどこいったの？」
「お兄ちゃん行っちゃったし、お前はここで遊んでなさいね。スキンブルはこの列車の中を見回ったりネズミやゴキブリを捕ったりしてるんだぞ。えらいなー」
「ねじゅみしゃん……ぱうんまだつかまえられないの」
「スキンブルはすごいからなー。あいつのおかげで、この列車毎回満員なんだぞ。お前のお兄ちゃん、ほんとにすごいな」
「しゅきんぶるおにいちゃんしゅごいのー」
…会話になっているわけではないですからね。誤解のないように。
「じゃ、遊ぼう。ああ、でも幸せだなぁ……憧れの車掌になって、勤務中に猫と遊べるなんて、夢みたいだ…」
自他共に認める鉄道マニアにして猫マニアにとって、確かにそれは至福であろう。しかし、いいのか？ 勤務中に遊んで、いいのか？
「にゃっ、にゃっ、にゃ……いろんなものがあるのー。これなにかなー？」
パウンはパウンでマイペースに楽しんでいる。自分の状況を最早心配していないらしい。…いいのか？
「これにゃ〜に？ なんだかほそくなるのー」
「ああっ！！ それ引っ掻いちゃダメだ、破れるから！！」
机の上にあった本で爪を研ぐ猫。かなりやばい。ただし、ものは暇つぶしのために持ち込んだ私物であるからして、破れても特に問題は広がらないだろう。ちなみに某超有名な列車ものミステリの古典の文庫本であった。クリスティはすごいやねー。
「にゃ〜？ これにゃにかな？ いいにおいすりゅの〜」
「あ、それはさわっちゃだめだぞ。こぼしたら大変だし」
今度はティーカップ（中身入り）に興味を持ったらしい。くんくん鼻を動かして匂いをかぐ様は目眩を覚えるほどの愛らしさであるが、危険には違いない。いろんな意味で。
「いいにおい…おいしそうなの〜」
パウンちゃんはティーカップの中身の薫りが大いに気に入ったらしい。くんくん。
「おいおい、ほんとにこぼすなよ・・・それ、スキンブルが好きなやつだけど」
「いいにおいにゃの〜」
「こ、こら待ちなさい。それがひっくり返るとさすがにまずい！！」
「なめてみるの」
素朴な疑問。猫は紅茶を飲むのであろうか。って言うか、飲めるのか。人間の食べ物でも犬猫に与えては行けないものって、結構ありますよね。タマネギとかチョコレートなんか、毒になるんですよね。紅茶大丈夫なのかな…イギリスの猫だから大丈夫って理屈はないだろうし。
「にゃ〜」
だがしかし作者のしょうもない疑問など気にもせず、パウンシヴァルはティーカップの中身をぺろぺろなめた。
「ふにゃ〜…いちいの」
ぺろぺろこくこく。おいしそうである。紅茶もここまで美味しく飲んでもらえれば本望であろう。
「あ〜あ、飲んじまったか。お前、大丈夫なのか？ スキンブルは平気だけど、それスコッチ入りなんだけど…」
薬でもアルコールでも、効き目は原則的に体重に反比例する。もちろん体質にもよるだろうが、単純計算して体重３キログラムの猫は６０キログラムの人間の２０分の１の量のアルコールで同じだけ酔っぱらえるわけで、つまりどういうことかというと。
「ふゃ〜〜……にゃんだかまわるの〜……」
こういうことに、なるわけですね。だから子どもは酒飲んじゃいかんのです。同じ量飲んでも肝臓にかかる負担が違うのよ。ちなみに作者はワインをコップに１センチほど飲んだだけで出来上がれる安上がりな体質です。弱くてさあ…（ちょっと問題別）
「あ〜にゃ〜…ぱうんまわってゆの〜……ぐーるぐるー」
あっさりと酔っぱらったパウンはふらふらーと机の上で回転すると、いきなりぽてりと落下した。
「あああっ大丈夫か…えっとスキンブルの弟」
名前はまあ分かるわけないのだが。他に呼び様はないのだろうか。
「くー」
いずれにせよ、パウンちゃんは、落下の衝撃で目が覚めるというようなこともなく、幸せに眠っていた。
４．うんてんしゅはきみだ しゃしょうはぼくだ
「皆様、何事もございませんか？ 何かあったらご遠慮なくスキンブルにお申し付け下さいませ〜」
その頃スキンブルは、やっぱり全く疲れを見せない様子で、列車の中を見回っていた。乗客同士で少々のトラブルがあっても、彼の姿が見えただけでそんなものはあっさりと収まってしまう。というわけで、見回りと言うよりは実質的には愛想振りまいて歩いているだけだったりする。それが証拠に、お客様たちは既に寝てしまっている一部を除いて、瞳をハート型にして見つめているのであった。
「あ、ネズミみーつけたっ」
途中でちゃんと害獣・害虫の駆除などもしているので、ただのアイドルではないのだが。
「きゃーっ。ネズミ獲ってるわっ」
「えらいわねー、うちの猫なんてネズミ獲れないわよ。ゴキブリも怖がっちゃって、まるで駄目なの」
最近の飼い猫は多いらしいですね。そういう野生の本能を失った純粋培養家猫。でも、うちの父の知り合いの家で昔飼っていた猫（アメショー系雑種）は犬と戦う上鳥を捕ったりする奴だったそうですが…。
「あら、そんなのうちのもそうよ」
「でも、かわいいのよね…」
「そうなのよね…」
結局、単なる猫好き同士のうちの猫自慢であったらしい。
まあ、いずれにしても、好きこのんで列車に乗り込んだあげくに車内で労働してしまうような猫は世界中探してもこいつだけであろうから、ご自宅で飼っているごくふつーの猫にアホな期待をかけないのは良いことである。
「お仕事はたのし〜。スキーンブールシャンクス、てぇつーどーうきゃ〜っと」
足取りがそこはかとなく踊っている。どこまでも幸せな鉄道猫であった。
「ふゃ〜〜〜……ぱうんちゃんよっぱらいー………ぐーるぐるなの〜」
そしてパウンシヴァルは目を覚まして再び酔っぱらっていた。しかし元気だった。ふらふらするのを楽しんでいるらしい。まわりつつ喜んで、部屋の中をうろついている。
「おいおい、ほんとに大丈夫かスキンブルの弟…ああ、これから俺も見回りに行かなきゃならないんだけどなー」
「ほょ〜……ぱうんちゃんまわゆの〜〜〜……あにゃ？ ぽてぽて〜…」
すでに意味不明である。元から正しいコミュニケーションは望むべくもないひとりと一匹であったが、お互い好き勝手なことを言っている。
「参ったなぁ。これじゃほっといたら部屋の中グチャグチャにされそうだしなー……しょうがない」
そして車掌さんは意外と決断力のヒトであった。もっとも決断力と判断力は別のものである。すなわち、決断力があることとその判断が正しいこととはイコールではない。
「お前も見回りについて来なさい」
正直に判断の根拠を述べれば、かわいい仔猫と一緒に見回りに行きたかったということになるのだが。
「ぅみょ〜〜？ ぱうんもまわりゅの？」
違う。違うが、今さら正しい認識など無意味であった。
そしてパウンヴァルは、車掌さんの懐に入って車内に出て行くことになったのである。
「切符を拝見いたします」
列車を見回っているマクスウェル氏は、意外とまともにお仕事をしていた。して当然なのだが、猫を相手にしているときとは別人である。
「みゅ〜……ふにゃぁ……」
パウンシヴァルは彼の懐の中でうとうとしていた。ごはん食べてお腹はいっぱいだし、暖かいし、幸せである。永遠に幸せだろう彼は。羨ましい性格である。
「ふぃ〜……おいちそーなごはん……ぱうんおにゃかしゅいたの……」
なにやら脳天気な夢を見ているらしい。しかし、こういう時の寝言の定番は「もう食べられない」だと思うのだが、このあたり一線を画していると言えよう。そんな一線画さなくて良いとも言うが。もっとも猫の言葉でありますからして、人間には「ふにゃぁ〜」としか聞こえない。
そしてマクスウェル氏の方と言えば、
「ううっ。可愛い……幸せだなあ…」
真面目に仕事をしつつもいきおい顔はゆるみ、いつもより３割増し愛想も良くなると言うわけであった。それ自体は、決して悪いことではないだろう。お客さんも喜ぶんだし。でも、真面目に仕事しようね。
「にゃぁあ……おいちかったの…もっとたべりゅの…」
まだ言うか。やっぱり脳天気は無敵である。
「……さて、一回りしたな。もう寝てる人も多いしなこの時間は…。しばらく休憩しようスキンブルの弟」
「みぃ〜」
パウンシヴァルは半分寝ながら返事をした。言うまでもないが、猫が半分寝ている姿というものは大変に可愛らしい。まして仔猫だし。ふわふわだし。
「可愛い……」
いい加減しつこいが、やはり感動に打ち震えてしまう猫好きの悲しき性であった。
「ふにゅ〜…みぃ……うにゃあ〜」
「うんうん可愛いなあ…しばらくここで寝てなさいね。お兄さんがごはん持ってきてあげよう」
「みー」
「ああ……可愛い………」
マクスウェル氏は感動に涙ぐみつつ車掌室の方へ去って行った。
置いて行かれたパウンシヴァルは窓枠にぽてっと寝そべって半分寝ながら「ふにゃぁ〜〜」とか言っていた。可愛い。
パウンシヴァルは寝ぼけていた。アルコールが良い感じに頭に回って、ちっちゃな脳味噌を適度に麻痺させていた。ぼーっとしつつハイになる、そんな状態である。
「みゅう……おにーたん……」
寝ぼけパウンはそんなことを言いながらふらぁ〜と立ち上がった。
「おにーたんどこかなー……？」
もちろん言うまでもなく、スキンブルに今は会えないけど帰れば会えると教えてもらったことなどきれいに忘れている。
「ぱうんおにーたんさがしにいくの」
決然と言ったパウンは、やっぱりふらぁ〜としつつひらりと…もといぽてりと窓枠から飛び降り（落ち）、夜行列車の廊下を決然と（そしてぽてぽてと）歩き出した。
「夜行列車の旅は素敵、暗闇の向こうに……あ！！ 車掌さんだー！！」
楽しくお仕事をしながら元気に歩いていたスキンブルシャンクスは、猫缶を持って向こうからやってくるマクスウェル氏を見て嬉しそうに叫んだ。
「車掌さーん！！ お仕事終わったの？」
「お、スキンブル。ご苦労だなー」
「ね、ね、僕いっぱいネズミ捕まえたからね！ ゴキブリもこーんなおっきいの捕まえたの！！ えらいでしょー♪」
「ほんとにえらいよなースキンブルは。賢いし狩りは上手いし愛想はいいしめちゃくちゃ可愛いし」
「だって僕は世界にひとりの鉄道猫だもん！！」
いい加減しつこいとお怒りになる向きもおありでしょうが、会話が成立しているわけでは決してありませんからね。
「車掌さんもお仕事終わったんだねっ。ね、お部屋帰って休憩するの？」
「ああ、忘れてたけどスキンブル、お前の弟がこの近くにいるんだ。仕事も良いけど、ちょっと遊んでやらないか？」
「パウンは僕の弟じゃないよー。似たようなものだけどさ。でも、何でパウンこの近くにいるの？ 車掌さんのお部屋にいるんじゃないの？」
「酔っぱらっちゃったから連れてきたんだけどなあ。それにしてもほんとに可愛いな、お前の弟。ふわふわして…ああ、もちろんお前もものすごく可愛いぞスキンブル」
「パウン酔っぱらっちゃったのー？ しょうがないなあ。でもなんで酔っぱらっちゃったの？」
「でも、スコッチ入り紅茶飲んでもお前は平気なのにあの子はダメなんだな。猫でもやっぱり色々あるんだなー」
「えー、パウンスコッチ入り紅茶飲めないんだー。大丈夫なのかな？」
……しつこいですが（後略）。
「でも、酔っぱらってふにゃ〜となって寝てる姿も可愛いぞ」
「うん！！ パウン可愛いんだよねー。ふにゃふにゃになってるのもきっと可愛いよね、見てみたいなあ」
「お前がいつも外を見てる窓のところに置いてきたから、もうじきだよ」
「そうだ！ パウンもあの地面の星見てるかな。すっごくすっごくきれいなんだよねっ！！ 僕、あれ見るの大好きなのー」
「そう言えばスキンブルは窓から外見るの好きだよなー。ま、列車の窓から見える夜景ってのは格別だからな」
「だってすごくきれいだもん。向こうからいろんな色の光が転がって来るんだよねー。すごいよねー！」
「きっとお前の弟も喜んで見てるぞ。見とれてる姿も可愛いだろうなー」
「だってパウン可愛いもんー」
しつこ（後略）。
不毛な会話（？）を交わしつつ、ひとりと一匹はパウンシヴァルがいる（はずの）窓のそばまでやって来た。
「さて、待たせたなスキンブルの弟……あれ？」
「パウン、僕と一緒にネズミ取りしよ……あれー？」
誰もいなかった。
「パウンいないよー？ ほんとにここなの？」
「おかしいな。この俺がこと列車内部のことに関して間違えるわけが」
「どこ行っちゃったのパウン？」
「どこに行ったんだろう。ここで寝てたのに」
ひとりと一匹は顔を見合わせた。
「パウンーどこー」
「どこへ行ったんだスキンブルの弟ー」
「パウンってばあんまり列車の中うろついちゃいけないって言ったのにー」
「困ったな。一応人間とスキンブル以外の動物は自由に歩かせちゃいけないことになってるのに」
「パウンちっちゃいから変なとこに入り込んで出られなくなってたらどーしよー！ あああタンブルとマンカスに殺されるよー！！」
個人的な困り方である。
「とにかく、探すか。どこ行ったんだろうな」
「パウンー！！ ごはんあげるから出ておいでー」
「さっき車掌室へ行ったときに見なかったってことは、前のほうへ行ったんだろうな。スキンブル、一緒に探そう。お前の方が鼻も良いし」
「にゃあ！！ 探さないと大変なの！！」
ふたりはとりあえず列車前方に向かって歩き出した。
＜つづく＞
>>HOME >>TOP >>BACK >>NEXT