〜Lumie're dans nous〜



「共和万歳！　俺も仲間だ！！」


※


　───何故？　何故今になって？
　どうして、君が？

　ああ、とうとうこの時が来たんだな。
　参ったね、本当にこんなところまで来ちまったなんてな。
俺も大した大馬鹿野郎だよ。

　何故出てきた？
　あのまま隠れていればよかったのに。君は気付かれていなかったのに。
　何故、出てきた？
　君は───君だけは、ここへ命を捨てに来たわけではないだろう？

　俺はこのために来たんだよ。
　君は知らなかっただろうけどね。

　君は何故ここへ来た？
　

　誰にも強制されたりしちゃいない。
　俺は自分の意志でここへ来たのさ。自分でそう望んでね。
　まあ、そうでなかったとしても今更だがな。

　何故ここへ来た？　何も信じてなどいないくせに、何故ついて来た？
　僕にはわからない。
　君は何のためにここにいる？

　そうさ、俺は何も信じちゃいない。
　革命も正義も自由も理想も知ったことか。
祖国も民衆も権利も共和も俺にはどうだっていい。
　俺は───　

　君は何故ここへ来た？

　俺は信じているんだよ。

　君は何ひとつ信じてなどいないのに───

　俺は信じているんだよ。
　この世でただひとつ、信じたかったものを。
　だからここにいる。

　わからない。
　僕にはわからない。

　ただひとつ、俺は信じている。
　この世でただひとつ。
この目の前にある光を。
　───君だけを。

　僕にはわからない───

　君は、俺のよどんで濁りきった心に流れ込んだ一筋の清流だった。
　黄昏に沈んだこの魂に差し込んだ天上の光だった。
　この世にあってはならないもののように純粋で美しく、清冽な輝きに満ちた君の存在を、俺は信じる。
　それだけを俺は信じる。

　僕が信じるのは人民の権利だけだ。祖国の栄光だけだ。
　全ての人に自由を、正統なる権利を、圧政からの解放を。
　それだけが僕の望みだ。
　ずっとずっとそうだった。そのために僕は生まれてきた。
　それだけを、僕は信じる。
　けれど、

　ああ、君にわからなくてもお互い様さ。
　俺だって、君が掲げる輝かしい理想なんて理解出来ないんだからな。
　俺にとっては───これだけが真実だった。
　それだけさ。

　君はいったい何のために───

　自由のためじゃない。祖国のためじゃない。
　俺は君の───いや、君のためでもない。
　俺は、俺のためにここへ来た。俺にとっての、ただひとつの真実のために。

　僕は未来のためにこの命を捧げる。
　愛する祖国よ、市民よ、自由の女神よ、僕はそのために生まれてきた。
　自由を世界に。それが僕の真実だ。
　だが、君は───

　俺は未来など知らない。祖国も市民もどうだっていい。
　そんなもののためには俺は死ねない。
　俺は───　

　僕にはわからない。
　何故君は───

　俺が命を捧げられるのは君だけだ。

　僕はこの道を進み続ける。
　決して後戻りはしない。立ち止まりもしない。
　どこまでもどこまでも、僕はこの道を進む。
　僕はもう決して悔やまない。

　ついて行くよ。どこまででも、君と同じ道を行く。
───連れて行って欲しい。
　俺はもう決して悔やまない。

※

「ふたりを一撃ちで殺してみせろよ」

※

　……君は本当にそれを望むのか？

　俺は今、それだけを望んでいる。

　君が本当に望むのなら───

　俺は自分の唯一の真実に殉じたい。

　君が本当にそう望むのなら、僕は───

　君が君の理想に殉じるように、俺は自分の真実に殉じたい。

　───それだけを、今、

　それだけを───　

※


「───許してくれるか？」

　ああ、光が見える───

＜了＞

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≪あとがき≫
　うわぁ……。濃いなあ、また。（人ごとのように）て言うか、読みづらくてすみません。

　えっと。この作品は間違いなく『レ・ミゼラブル』のファンフィクションですが、完全に原作準拠です。
　アンジョルラスとグランテールの心中シーン（だから違うって）。その死の直前の、テレパシー会話……ではなく心の交流ですね。微妙に会話が成立しているようでしていないように書いたつもりですが、いかがでしょうか（言い訳してる時点でダメです）。まあ、会話じゃないんですがね。お互いのモノローグです。
　ミュージカルではこのふたりの死のシーンは激しく変わっておりますので、原作をご存じない方には意味不明だと思いますが。
　と言うか、読め。めちゃくちゃ素敵だから！！（腐ってます……）

　このシーン、突然出てきたグランテールの心理は分かるのですが、それに対するアンジョルラスの反応は全く描かれていないのですよ。驚いたとも喜んだとも怒ったとも悲しんだとも書いてない。ただ最後に微笑んで受け入れただけ。お前、何を考えてたんだ？！
　……というわけで捏造させて頂きました。ごめんアンジョルラス。っていうか、本当にこれでよかったのかしら？！（馬鹿……）　開き直るグランテールはまあいいとして、君はほだされてていいのか、アンジョルラス？！

　ちなみにこの話、朝通勤中に電車の中で思いつき、一日仕事をしながら脳内で練り（真面目に働けッ）、夜帰宅してから一気に書き上げました。
　私………本気で馬鹿………

　タイトルは「光を我らに」という意味のフランス語…のだと思うのですが、何しろ私フランス語など全く分からないもので、うちのパソコンに入っているSherlockの翻訳機能を使って出してきたものです。
　しかも日本語からフランス語に直接訳せなくて、日本語→英語→フランス語という無茶をやらかしていますので、正しいかどうかは激しく疑問です。eの上に付くはずのアクサン記号も表示出来ないからごまかしてるしさ。
　…どうも、すみません。

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