レ・ミゼラブル　２０１９年７月１３日　夜公演
梅田芸術劇場メインホール　三階B席

ジャン・バルジャン：吉原光夫 ファンティーヌ：二宮愛 マリウス：内藤大希 テナルディエ：斎藤司 アンジョルラス：相葉裕樹 リトル・コゼット：岩瀬花音

ジャヴェール：川口竜也 エポニーヌ：唯月ふうか コゼット：熊谷彩春 マダム・テナルディエ：鈴木ほのか ガブローシュ：小林佑玖 リトル・エポニーヌ：桑原愛佳

司教：中西勝之　　工場長：伊藤俊彦　　バマタボア：武藤寛　　グランテール：丹宗立峰 フイイ：杉浦啓介 　　コンブフェール：中井智彦　　クールフェラック：今井学　　ジョリ：新井海人 プルヴェール：横田剛基　　 　レーグル：染谷洸太　　バベ：大嶺巧　　ブリジョン：松村曜生 クラクスー：長尾哲平　　モンパルナス：大津裕哉 ファクトリーガール：森加織　　買入屋：廣野有紀　　かつら屋：桑原麻希　　マダム：湊陽奈 女（宿屋の女房）：伊藤美咲　　女（カフェオーナーの妻）：篠崎未伶雅　　女（病気の娼婦）：桃菜 女（鳩）：木南清香　　　女（あばずれ）：小林風花　　女（若い娼婦）：小倉優佳

　レミゼは、良い。さいこう。これでしばらく見納めだなんてそんな。
　あ、いかん観劇直後に書こうとしたら言語能力が崩壊した文章しか出てこないわ困ったな……。 　………えーと、少し落ち着きました。全く余韻は抜けていませんが。最高だぜ。
　今回でバルジャンコンプリートですね。なんだか旧演出版の印象に近かった気がします。何故だろう。あとジャヴェール……やっぱり川口ジャベ好みだ……！！

■プロローグ
　バルジャンの「パンひとつだ」「十九年の重さを忘れるものか」に対し、「刑は五年だぞ」で明らかにそれまでより声が低くなるジャヴェール。前もそうでしたが、怒っていますね。
「お前はあれだけ脱獄を繰り返したせいでここまで刑期が伸びたというのに未だに反省していないのかクズめ」という声ですねこれは。よっぽどカチンと来たんだろうなあ?。ぐっ（拳を握る）。
　バルジャンはかなりの暴れ者ですが、あまり「野良犬」という感じはしなかったかな？　荒みきってはいるけど人間だったというか、人間のまま落ちるところまで堕ちたというか。あくまで印象ですが、独白で「野良犬から人間に戻った」というほど劇的な変化は感じませんでした。
　司教様が差し出した燭台を、反射的にひったくるような勢いで受け取ってしまい、そのあと「さて我が兄弟」の時点で既に泣いていますね。呆然としている時間は短くて、すぐに後悔と自己嫌悪というはっきりした「感情」が戻ってきている？　その辺がそういう印象になったのかも。攻撃されて防御本能的に反射で噛み付いているのではなく、そこに「怒り」という人間的感情がある感じかな。
　去っていこうとする司教様を呼び止め、燭台を返そうとしますが、司教様はそのまま去っていく……からの爆発で、一度鞄を投げ出したりもしていました。許可証も握りつぶして投げていましたね……。

■一日の終わり〜夢破れて〜ラブリィ・レイディ〜ファンティーヌの逮捕
　このファンティーヌは「これまでは本気で恋人の帰りを待っていた」気がします。そんなわけないと理性では分かっていても本気で夢を捨てきれずにいたんじゃないかなと。で、この『夢破れて』でついに完全に折れた、そんな感じ。
　ジャヴェール、足に縋りつかれて冷たく振り払い、「まともな仕事に?」でぐいぐい前に出るものでファンティーヌは追い詰められるように後ずさりしていました。警部殿……こういうのがお嫌いなのは分かりますがそこまでせんでも。
　市長に殴りかかろうとしてその勢いで倒れこんでしまうファンティーヌが哀れです。

■馬車の暴走〜フー・アム・アイ
　この市長様は「怪力」に説得力があるわー……。見るからに強そうですものね吉原バルジャン。
　あ、市長様、自分で上着を着ている。ジャヴェールが着せてあげるんじゃないバージョンもあるんですね。
　ジャベール、確信には至らないけれどかなり疑っている、という感じです。じっと市長の顔を見ているとそういう印象になりますね。川口ジャヴェールはものすごく職務熱心で真面目なので、反応を見極めようとしている感じが強いです。バルジャンの告白にもほとんど動揺はしていない模様。
　バルジャン、生きた心地がしないだろうに、とりあえず彼が去るまで平静を保てるってすごいな……。
　ところで市長様、「人違いだと」のとこ、声飛んでましたね。
「さあジャヴェール」からずっとジャヴェールのことしか見ていない市長様……。だったらさっき話聞いたときに名乗り出ろよとちょっと思ってすみませんでした。

■対決
　ジャヴェール……このバルジャン相手によく向かっていくな、度胸あるな……ってかこいつ相手なんだから最低でも三人くらい引き連れて来ようよ！
　体格差が体格差なもので、パンチ一発でのされてしまうのがものすごく納得。むしろいっときは攻めていた事実に驚愕ですよ。
　繰り返しますが吉原バルジャン相手に格闘を挑むってすごいですよね。怖くないのか！？
　そしてレアなミス、バルジャン！　歌詞間違えました、「俺の頼み聞いてくれ」を「やり残したことがある」と言ってしまい、もう一度繰り返して言っていました。
　私だったらこんなミスしたら多分パニックになるし、相手役がやっても相当動揺すると思うんですが、一切見せずにそのまま続けるおふたりともすごい……！　さすがプロ！

■宿屋の主人
　エポニーヌがマダムと同じポーズで腕組んでコゼットを睨む真似をしているのが可愛い。「さっさと行きなこのウスノロ！」みたいな言葉遣いは真似しないようにね。
　テナルディエはすごく軽薄な小悪党という感じです。そのままへらへらどこまでも道を踏み外していったというか、道を踏み外すのも「まあ良いか」くらいの軽い気持ちだったというか、怖いなあ。
　今更ですけどマダムが夫のケツにぶち込もうとしているボトルの中身って、客の……………いや…………
　バルジャンに対して脚を見せたりしなを作ったりして誘惑しようとしているマダム。これもやっぱりやる人とやらない人がいるんですかね。

■パリ
　そういえばガブローシュの歌が短くなったけどベガーズの喧嘩のくだりもなくなったんだった。ちょっと寂しい。
　内藤マリウスはエポニーヌに声をかけられてからもずっと仲間たちの方を気にしているんですね。彼らが帰っていっちゃった方向を何度も見ていて、追っていこうとしているのにエポニーヌがちょっかいかけてきて放っていくわけにもいかず、ああもうこんなときに……みたいな気持ちでいたのかな。まあコゼットと出会って全部吹っ飛ぶわけですが。殴る。
　あ、証言はしようとしていましたね。
　警部殿はテナルディエが喋っている間ビラを剥がして見ていました。「俺の名を聞いて」で落とすのがなんともいえんです。
　で、テナルディエ。「被害者なしなら帰って…」で立ち上がり、膝を払いながら普通の口調で「いいね？」。でも睨まれて慌てて戻り、警官に捕まえさせるところに笑いが出ておりました。

■スターズ
　メモに「かっこいい　かっこいい」と書いてありました私は馬鹿だ。知ってた。
　いやー………ほんっと格好良かったわああ……反芻するたび幸せな気持ちになるわあああ……。他に書くことないですよね、最高でした。

■ABCカフェ〜民衆の歌
　うーん、やっぱり「怒り」が激しいアンジョルラスですね。「遅刻だぞ」「マリウス、分かるけれど」どちらもはっきりと怒っています。
　理性的な「説教」どころか、「叱責」ですらなく「罵倒」に近いくらい、感情的な口調に聞こえます。……グランテールもしょっちゅう怒鳴られていそうなわけですがお前は良い度胸だな。
　ふたばが「激情家のアンジョルラスやな」と言っていましたが本当にそんな感じ。今回、あんまり「カリスマ」という感じはしませんでした。人を惹きつける力は強烈なんですが、自分の「理想」や「信念」ではなく「激情」に周囲を引きずり込んでしまう人という感じで、だからカリスマ感が薄かったのかな？　しかし非常に危うくてよろしいですね。
　あと高めで若々しい声が綺麗でとても良いです。こういうアンジョルラスはすごく新鮮ですが、こんなのもありかー！
　オフマイクの声が今回もかなり聞こえましたが、何と言っていたのかは聞き取れず。くそう。

■プリュメ街
　コゼットかわいい。「恋に落ちたからなの」と呟いてから「きゃっ」と小さく声を上げたのがすっごく可愛い。
　バルジャンに対して「何も知らず聞いていない」よりも「ねえパパ、あなたには森の中の迷い子」というところの方が不満そうでした。つまり、パパが「何も教えてくれない」ことではなく「自分を一人前と認めてくれない」ことの方が彼女には不満なわけですね。原作の時代背景を考えるとちょっと現代的すぎるキャラという気もしなくはないですが、共感はこっちの方ができますな。
　あーーー、エポニーヌもほんと健気で可愛い。そして以前も書いたが「熱く命に触れた人」でマリウスはコゼットを、エポニーヌはそんなマリウスを見つめているのが何とも泣けるのです。マリウス反省しろ。

■ワン・デイ・モア
　あーーーーーーーー最高。（語彙力なさすぎる）
　エポニーヌのソロからアンジョルラスのソロへの切り替わりが好きなんですが、今回それがものすっごく格好良くて！　いいわあ！
　あと警部のお祈り姿が実にストイックで素敵です。バレてると思うけど毎度そこしか見ていません。
　とにかく最高！

■オン・マイ・オウン
　マリウス殴る。は、まあいつものことですが、「分かってくれない」と嘆くエポニーヌの方もマリウスが彼女を危険なバリケードから遠ざけるために手紙を託した（ミュージカル版のみですが）ことは分かっていないんですよね。エポニーヌとしては危険だろうが何だろうが彼と一緒にいたいわけなので、どちらにせよすれ違いなのが哀しいです。
　バルジャン、駆け込んできたエポニーヌの腕を掴んで突き飛ばしております。気持ちは分かるけど乱暴っすよパパさん。
　エポニーヌは「駄賃」を無視して彼の手に軽く叩きつけるように手紙を渡していまして、この辺微妙に腹立たしかったのかなと……そういえば新演出になってから、無理矢理渡されたお金を投げ捨てる演出は無くなったんでしたね。
　歌は、とにかく泣ける。マリウスお前（略）

■バリケードのジャヴェール
　ジャヴェールはガブローシュを捕まえようとして（？）立ち上がったところを取り押さえられていました。そういえばガブローシュはジャヴェールの顔を知っていたわけだけどジャヴェールもガブローシュを知っていたのかな？　ベガースのシーンで絡んだりはしているんですよね。ミュージカルでは知っていた設定かな、と思っております。
　ところで相葉アンジョルラス、怒りっぽいようでジャヴェールに対しては終始冷静なんですね。「学生の裁判」と馬鹿にされて反射的に殴りかかってもおかしくなさそうなんですが。あ、怒ると怒鳴るけど暴力には行かないタイプなのかな？（話を作るな）

■恵みの雨
　マリウスが最後エポニーヌにキスしたかどうか、よく分からなかった！　していたような気もするんですが、抱きしめただけかも。
　何にせよ、泣けます。そして力なくへたりこんでいるマリウスを一顧だにしないリーダー…！　おおーい！
　えーと、本当に無視していました。エポニーヌが運び去られたらすぐにそこで切り替えたらしく、さっさとジャヴェールの方へ向かいかけ、そこで攻撃の開始とバルジャンの登場にすぐまた切り替えてバリケードの方へ。その間、一度もマリウスを見ず！
　うわあひどい、というかつまりやっぱりこいつエポニーヌのことはダシにしただけなんだな！
　グランテールが隣に座って慰めてあげるのは演出でそうなったんですね。アンジョルラスは今回はマリウスの方へ銃を渡したようです。

■バルジャンとジャヴェール
　よし、バルジャンとジャベールが揉めてるの、ちゃんと見える。
　すみませんこないだ見切れたのがとてもとても哀しかったもので。
　「バルジャン、良いか警告だ！」で胸ぐら?みかかるジャヴェール。振り払うバルジャン。ぐっ（拳を握る）。
　「俺を逃せばまた対決だ、さあ！」と叫んでいますね。バルジャンの方もぐいぐい押し返し、ああもうこのまま殴り合って友情が芽生えたら良いのに……いやあり得ないけど……！

■ドリンク・ウィズ・ミー
　グランテールの言葉に最初は拍手が出ていたのですが、その後非難の声がかなり上がっていますね。はっきり聞き取れませんでしたが。掴みかかろうとして止められる奴までいましたよ。
　で、その騒ぎに反応したようにアンジョルラスが降りてきて、グランテールは彼の胸元に拳を押し付けて「偽りじゃないか」。アンジョルラスはその手首を掴んでじっと見つめて突き放したのか、グランテールの方から離れたのか？　

■彼を帰して
　ああっ、吉原バルジャンはマリウスをほとんど見ていない！
　後半、「若い彼に平和を……」のところでマリウスを指した以外はほぼずっと神様を見つめている！　ああ、そういう違いもあるんですね！
　にしても、私、いつからここでこれだけ泣けるようになったんでしょうか。人間って、変わるものなんですね……！

■最後の戦い
　んー、ここで感情先行で叫ばれると、どうしても「やけになって死を選んだ」印象になってしまうんだなー。うーん。
「世界に自由を！」も叫んでいましたなー。でもまあガブローシュの死は衝撃的ですよね……。
　マリウスに駆け寄ったアンジョルラスに対し、手を差し伸べるグランテール。その手を取って立ち上がり、ぎゅっと抱きしめてからバリケードを駆け上るアンジョルラス…なんですが、離れるときの、グランテールの背中の方に腕を回した動きが、「一緒に行こう」と促している仕草に見えなくもなかった……おおうこれは一体……。
　で、錯乱気味に飛び込んでくる警部殿。「バルジャアアアアン！！！」という叫び声がすでにかなり壊れかけています。
　で、足元に血痕を見つけて下水道に気付き、「そこか」と呟いて駆け出していく……バルジャンを追うことにすがってギリギリ精神の均衡を保とうとしている感じでしょうか。あああああ……。

■下水道
　何だろう、ヘラヘラ楽なように生きてたらいつの間にかこんなところにいた、って感じのテナルディエですね。
　死体を漁りながら「ヒャッホー」とか言っている異様なまでの軽薄さが逆に怖いっす。このノリで躊躇なく人殺しもしそうですよこの人。というか、へらっと既にやってるんじゃないのかなあ……！　こわい！

■ジャヴェールの自殺
　「すぐ来ると思ったぞ」でバルジャンの迫力に押され、とっさに銃を降ろしてしまうジャヴェール。
　で、そのことに気付いて「慈悲を求めるか」でもう一度突きつける……んですが思いっきり手が震えていてとても撃てそうにないんですね。あああ……。
　怒っているのではなく怯えているように見えます。バルジャンが理解できなくて、怖くてたまらないという感じでしょうか。「すぐ行くのだ」も、耐えられなくて「頼むから行ってくれ」って感じに見える……おおおお………
　……とうとう言語能力が崩壊して感嘆詞しか出てこなくなったぞどうしよう……。
　バルジャンが去った途端、ふらっとよろけて片手で顔を覆う警部殿。あああああ。やっぱり登場した時点でぶっ壊れてますね、これは。
　ジャヴェールはバルジャンのことを「天使か悪魔か」と言っていますが、こういうふうに考えてしまう辺りがこうなっちゃう原因なんでしょうなあ。
　バルジャンは徹頭徹尾「人間」なんだよ。良くも悪くも。その発想が多分ないですよね、ジャヴェールって。
　あ、やっぱり川口ジャベは笑わないんだ。恐怖に震えるように自分の体を抱くのが何とも言えません……！　あああああ！　やっぱり言語が崩壊するー！！

■カフェソング
　マリウスがコゼットに甘えなくなったのは役者さんの演技なのかそれとも演出の変化なのか。
　あれができる男性キャラは彼だけなので、ちょっともったいない気がしなくもありませんが、まあ、二十歳過ぎた男が年下の女の子の胸にすがって泣くのは……でもそれが許されるキャラはやっぱり貴重だな……どうでも良いですけど。
　別れを告げた後、コゼットのいる部屋の明かりをじっと見ているバルジャンにすごく泣けました。

■結婚式
　「マエストロ、あれくーれ！」でした。テナルディエいいわあ……。
　ところでこの歌の最後の歌詞、昔の「金持ちになって神様と地獄で」の方が絶対良いとしつこく思っているのですが、変わらないんですかねえ。

■エピローグ
　バルジャンの「私は父じゃない」に、「パパ」と呼んで抱きつくコゼットに泣ける泣ける。血の繋がりがなくたって親にはなれるんですよパパさん！
　…いやむしろこの場合、コゼットの実父に関して教える方が最低だと思うのは私だけですか。バルジャンは知らないだろうけど。ファンティーヌも多分もうあんなクズどうでも良いだろうけど。
　とにかくここは涙涙なのです。司教様のお姿がとどめですよね。観客の涙腺を崩壊させようと狙っているとしか思えないんですよ！　泣けた！！

■カーテンコール
　バルジャンとジャヴェールが後ろに下がりながら互いの背中に回した手で軽く叩き合っていてもう。良い。
　バルジャンがリトルコゼットとリトルエポニーヌを両手に抱え上げていました。さすが力持ち。そして何と羨ましい両手に花。何だろう、このお方に抱っこしてもらったら力士に抱っこしてもらう並にご利益がある気がする……。花の方も羨ましい！（笑）
　緞帳持ち上げは手を広げて指揮するポーズ。こ、これもそれぞれ違うんでしょうかすごい！ 　あ、周りはあまり立っていませんでしたが、立ちました。あーーーー最高！！ 　

　 　お読みいただきありがとうございました。

>>BACK