レ・ミゼラブル 2006年3月14日(火)昼公演12:30〜
中日劇場 2階B 席


ジャン・バルジャン
エポニーヌ
コゼット
テナルディエ
アンジョルラス
ガブローシュ
今井清隆
新妻聖子
河野由佳
駒田一
坂元健児
大久保祥太郎
ジャベール
ファンティーヌ
マリウス
テナルディエ夫人
グランテール
鈴木綜馬
シルビア・グラブ
泉見洋平
森公美子
伊藤俊彦


 中一日で名古屋通いか………。
 ええ、今回の観劇は完全に衝動買いの結果です。
 最初はそんなつもりはなかったのですよ。12日だけで満足しようと自分に言い聞かせていたのよ。
 ところが、チケットが売り出されたのが大阪レミゼ公演中で脳味噌が沸騰していた時期でして、そのノリでこのキャストを見ていたらなんと言いますか別人格が降臨してしまいまして……。
 だってだって見たかったんだもん! 包容力溢れる今井バルジャンと透明感漂う鈴木ジャヴェールの組み合わせが!!
 しかも、大阪で出てくれなかった(な〜ぜ〜だ〜!!<ジーザスのユダ風に)駒田テナルディエと森テナルディエ夫人の組み合わせ!!
 これが見ずにいられるか!? ああやったろうじゃねえか遠征!! 馬鹿野郎〜!!(自分に)

 しかし、当日。
 朝外を見たら雪が積もっており、思わず「雪ー!?」と叫んでしまったのでした。おい、今日は何日だ? 三月半ばよ? 先週はずいぶん暖かくて、「そろそろコートしまわんと」なんて言ってたのに。まあいいけどさ。ふっ、雪ごときでこの胸の情熱の炎が消せると思って!?(馬鹿すぎる…)
 ところで全然関係ないのですが、この日ってホワイトディだったんですね。菓子業界に踊らされた日本国民に明日はあるのか。て言うか名古屋駅地下の某和菓子店にて本日限定の「ホワイトチョコういろ」なるものを目撃してしまった私はどうすればよかったのでしょうか。家族からは「何故それを買ってこん!」と糾弾されましたが、私個人的に和菓子とチョコレートは合わないと信じてるんです!!

 閑話休題。レミゼの話しに戻します。

 以前どこかで聞いたことがあるのですが、『レ・ミゼラブル』の男性キャラクターは、全員声のキーが特に決まっていないのだそうですね。要するにみんな広い音域が要求されるということな気がしますが、そんな中、当初はバルジャンが重低音、ジャヴェールがハイトーンのイメージだったというのです。
 逆だろそれは!? と、そう聞いたときは思いました。が、考えてみれば今回の組み合わせはそのパターンでした。いやー、いいじゃんそれも! 一番好きなバルジャン&ジャヴェールが実はそうだったとは。

 とりあえず行きます。もう冷静さは放棄しました。

■プロローグ
 囚人たちの中でひとりどでかい人はバルジャンだというのは分かっているのですが、いや本当に一目で分かりますねこの方だと。
 ジャヴェールさんは相変わらずの美声です…が、双眼鏡で覗いていて非常に気になったことが。バルジャンの顔を警棒で引っかけて無理矢理自分の方を向かせ、「忘れるなよ 俺の名を 24653」と言ったとき…ほんの一瞬ですが、笑ってました…? 「このクズが」と見下げ果てるように、一瞬笑ったように見えたんですけど。次の瞬間にはすっと無表情に戻って去って行かれましたが…。
 え、え、何なのそれ!? 目元が帽子で見えないので、笑いではなく怒り、または恫喝の表情だったのかもしれないのですが(口元の動きって似てますよね)、かなり動揺しました。
 バルジャン。分かりやすーく恨んでますね!(笑)
 荒んでやけになった様子が好きです。「そうだ、野良犬…」で鞄を捨てるように足下に落としたのがなんだか印象的でした。「俺を信じたな」で笑う演技も相変わらずで嬉しい! そしてテナルディエ夫人が森さんだとここで一目で分かると(笑)。
 食器を盗んで連れ戻されたとき。バルジャンが突き飛ばされた弾みで思い切り転がっていたのですが…あれはアクシデント? それともわざと? 「おいおい大丈夫か」と言いたくなる転がりっぷりでした。
 司教様は、鞄を抱え込んで目を逸らすバルジャンを抱き起こし、頬に手を添えて「あなたの魂…」。素敵でしたv


■バルジャンの独白
 うわあ、何かすごく泣けましたよ! 今井さんはこのとき、鞄を地面に叩きつけようと振り上げ、出来ずに鞄に引きずられるように倒れ込むんですよね。泣けるんだこれが…!
 「またあの地獄へ! 送り返さずに!」と、叫ぶように歌いながら泣き伏してしまうし。燭台握りしめて頬ずりするし。
 生まれ変わることを決心する、その心の動きががんがん伝わってきます。あー、すごい。


■一日の終わり
 工場長……!(どうやら私は小鈴氏がかなり好きらしい)(今更か)
 やはり、手紙を見せつけるように振ってみせる→受け取ろうとするファンティーヌをかわして机に置く→その上に座る、の一連の外道な流れがスタンダードなのでしょうか。
 でもって、彼女を両手で引き寄せ、頬に触れ、さらに手を取っていました。「荒れてるな」と言っているようです。「俺の言うことを聞けばきれいな手でいられるぜ」みたいな……うわー……。
 市長殿。「何だこの騒ぎは!」と、明らかに工場長に怒っています。怒ったついでに自分で解決しようとしてくれていれば良かったのにね。(禁句です)


■夢破れて〜ラブリィ・レイディ
 やはりシルビアファンティーヌはエプロンとキャップをその場に落として座り込む。弱々しいよなー…と思っていたら、なんとバマタボワの帽子を吹っ飛ばすという暴挙(笑)に及んでくださいました。わはは。
 おいおい、どーすんだ? と思っていたら、後ろの娼婦のひとりがすかさず拾って彼に渡していました。しばらくかぶり直さずに片手に抱えてましたね。ははは、こういうこともあるのねー!! あれでファンティーヌの株がちょっと上がったぞ。(何故)
 ジャヴェールは彼女に縋り付かれたとき、警棒を横にして持ったままぐいっと押し返します。ああ、あの冷ややかな突き放し方、すごく好き……v


■馬車の暴走〜フー・アム・アイ
 ……やっぱりジャヴェールさんは見てるだけ…。
 あそこで彼がバルジャンに先んじて馬車に駆け寄り、「助ける者はいないのか〜♪」とやったら話の展開変わりますよねー。いや見たくないけどさ。ジャヴェール非力だから出来ないしさ。今井さんだと見た目に説得力があるしさ。
 「私はそのバルジャンではないのか」。今井バルジャンはコートの前を広げるようにして言っていました。
 うーん…このときのバルジャンの心理ってどんなものなんでしょうか? 今回ちょっと「ひょっとして、ここではっきり名乗り出る気?」と思ったのですよ。
 考えてみれば、白を切り通すつもりならそんなこと言わずに「嫌な他人の空似だなー、はっはっは! まあ仕事を頑張ってくれたまえ!」とでも言っておけばいいんですよね。あんなことを言ったというのは…まあ、だからこそ後の葛藤がいいわけですが。
 いやもうこの苦悩がすごかったですよ!
 激しく葛藤しながら、「名乗れば牢獄、黙っていれば地獄」だけをひどく静かに言うので、逆にものすごく胸に迫ります。ここのシーンで泣きそうになったのって初めてかも。とにかく葛藤がぐんぐん伝わってくるのですよ。くーわー。
 あ、そうそう、「誰だ俺は…」は、何度かジャヴェールの方を振り返りながら言っていました。で、やっぱりジャヴェールは表情変えないんですね。うーん……ここはどう解釈すべきなんだろう……(妄想は常に発展を続けています)


■ファンティーヌの死〜対決

 手に息吹きかけて温めてあげるんですね。何か冬の日の朝みたいですけど…。
 そして、「抱いていて」と言われて、今井バルジャンは自分から彼女を抱き起こすのか! 本当に細々と違うんですねー!
 で、ファンティーヌはもうどうでもいいとして(おい)、対決ですよ。今井バルジャンは見た目が強そうで良いですね! 鈴木ジャヴェールは態度が落ち着いているぶん余裕ありげに見えますが、実際の戦闘力は一目で分かりますな。軽々と投げられそうな体格差がなんともいいですわ。(そうなのか)
 そして、バルジャン。「考えろジャヴェール!」や「お前なんぞに負けはしないー!!」を思いっきり怒鳴ってやがる。しかも、かなり本気で椅子で殴りかかってる…。市長殿、殺る気ですね? 本気で「刺し殺しても」やる気でしたねッ!? 実際は「殴り殺しても」だったけど。


■宿屋の主人
 出た。…と、とっさに思ってしまいました。
 すごいぜ駒田&森テナルディエ夫妻! 存在感が!
 特にマダムの方は物理的にも…いや失礼。でも、夫とかお客さんとか吹っ飛ばしながら歩いてらしたし。なんかもう一歩歩くたびに客席の笑いを誘っていらっしゃいましたよ。
 女性客のお尻を触った夫に、妻ツッコミ。夫の「やってねえよ!」という声がはっきり聞こえましたよ。うーん、夫婦喧嘩になったらこの夫婦だとなあ…ははは…。
 コンブフェール旅人さん。カップのお酒を一口飲んで、まずかったらしくこっそり横に捨て、さらにカップの中を指で拭っていました。……なにが入ってたんだ、そのカップ。
 しかし、やっぱり女性客のスカートはめくるのだな。マダムにチップ渡すとき、胸揺すって要求されてその谷間に押し込んでましたし…。そしてその手をじっと見て感触に浸ってたし…。いや、あれはちょっと真剣にうらやましかったぞ!! わたしも触りたい!(待て)
 その後もマダムはチップ要求のたびに胸を揺すっておいででした。彼女にしか出来ない技ですね。でも、バベ旅人さんが同じように谷間に入れようとすると、コンブフェール旅人さんは止めていらしたように見えたのですが、あれはどういうことでしょうか……「俺の乳だ」とゆーことか? 一応人妻だぞ、彼女は。
 「自惚れ野郎の…」のひたすら下品な仕草には、もう何も言いません。素晴らしすぎる、この夫婦。


■裏切りのワルツ
 テナルディエさんがコゼットを頭下にして抱え上げようとした時点でなにをかいわんやだった……。
 で、なにより素敵だったのはですね。
 テナルディエ氏、ファンティーヌの死を知って、わざとらしく泣き真似しながら「この子には尽くした、家族同様扱ってきました」そこまでは普通だった。その先…。

「旦那、本当だがね〜」


 一瞬の沈黙の後、爆笑。すかさずテナルディエは続けて「そうだがね〜」
 ご当地ネタか!! ベタだけどそれ故に笑わずにはいられませんわ。素晴らしいですわ。やっぱり最高だわ!! あんたは偉いっ!!(笑)
 さらに誰が偉いって、ここで笑わない共演者の皆さんだと思います。
 テナルディエがどんなにぶっ飛んだアドリブをやらかしても、ここでバルジャンが吹き出したりしたら話が変わってしまいますしね。見事に仏頂面を維持して「お気持ちは立派です」を言った今井さんも偉いわ。
 一瞬だけ台詞言うタイミングが遅かったような気がしたけど…(笑)。そして、その言葉に思いっきりわざとらしく泣き声を高める夫妻はさらに上手だった気もしますけど…。
 そしてバルジャンはコゼットのぶん回しっぷりがすごいです。うっかり手を放したらすごい勢いで飛んでいっちゃいそうです。最後にぎゅっと抱き締めたのがなんとも素敵でしたが、コゼットとしては怖いんじゃないだろうか、あれ……(笑)


■パリ
 いやー、やっぱりアンジョルラスは声がすごいわ。坂元アンジョルラスは、あの声聞いてフラフラついていく奴が本当にいそうです。強烈です。
 マリウス。
 エポニーヌの「あたしも読めるわ」に、「あっはっはっは!」とめちゃくちゃ爽やかに大笑いしやがりました。失礼な。
 さらに、「何だよ、ふざけて」と言いながら彼女の腕をぽん。本当に、「しょうがないなあもう」という表情。岡田マリウスの「な、何だよぉっふざけて……っ!(ばたばたばたと逃げる)」(ほんとにそんな感じなのです)を思い出すだに、同じキャラクターだと思えないくらい違いますな……。
 そして、待ちかまえていた(正直に自己申告)ジャヴェール再登場v あーもう本当に素敵。かっこいい。
 「見ていた者は話せ」と言いながら、証言したそうにしているマリウスが全く眼中にないのも素敵v(そうなのか!?) ていうか本当にちょっとは庶民の声を聞きましょうね、公僕様…(笑)
 テナルディエ。「被害者なしなら帰って良いね」と立ち上がってジャヴェールに寄って行ったはいいけれど、ジャヴェールが無言で見返した瞬間そそくさと戻って手を上げ直しました。分かりやすすぎる…!


■スターズ
 だからね「ゴミを始末しろ、仕事に戻れ!」の後背中向けて佇む姿がもう(以下略)。
 ああ、素敵だ………v 何かもうこの辺書く度に語彙が貧困になっていくというか「素敵」と「かっこいい」しか書いてない気がして自分が哀しいのですが、でもいいのですあの雰囲気は言葉なんぞで表現し切れるものではありませんわ(開き直るな)。
 お祈りのとき、一瞬だけ目を閉じていたのが何故かツボに入りました。ああ……私、本当にジャヴェールが好きなんですねー……(ちょっと陶然)


■ABCカフェ〜赤と黒〜民衆の歌
 アンジョルラスかーっこいいー!!
 いやもう坂元アンジョルラスって歌上手くて優しくて可愛いくてすごく好かれてそうだけどちょっと雰囲気が庶民的よね、なんぞと思っていたのですが…いやあ、なんだかどんどんかっこよくなっていかれるではありませんか。嬉しい。
 しかしやはりマリウスは無視なのね。色ボケしたマリウスの浮かれた台詞に、フイイが何だかかなり苛立った様子を見せているのですが、アンジョルラスが「あれはほっといていいから」と声かけたような。あの、ひょっとしてマリウスって普段からそういう扱い…?
 泉見マリウスは「自分のことより民衆のために」という言葉にハッとしたような顔をしてちょっと俯いちゃうのですね。で、しばらく考え込んでる。そして、自分でちゃんと決心したらしく、グランテールの方を見ずに立ち上がりました。ほー。けっこうしっかり者っぽいですね、泉見マリウスは。
 あ、ところで、『民衆の歌』歌いながら学生たちがはけていくとき、最後列にいるグランテールとマリウスが肩組んでるのはそういう演出なのでしょうか。このふたりが仲良し……あ、なんかいいかも…。(またなんか湧いているらしい)


■プリュメ街

 泉見マリウスって、両手広げて走るの好き? 3回くらいやっていたような…。すげぇアホっぽくて可愛くてよろしいです。私、最近本気でマリウスが可愛くなってきました。以前はきっぱりと嫌いなキャラクターだったはずなのに…。ああ、これが大人になるということなのね?(そーか?) あえて「歳を取る」とは言いませんよ!?
 感情が分かりやすいです。突然の登場にコゼットが驚いていると、「君を困らせた?」でバタバタ帰ろうとし、ハッと気付いたように頭に手をやって「君の名前も知らない」と。
 その「ああっそうだったぁっ!」という表情が非常に分かりやすい。ストーカーとはいえ、これではほだされてしまうのも無理無いかもしれない……(待てい)
 さらに、だだっと駆け寄って手を取ろうとし、寸前でハッと引っ込め、「いい? いやじゃない?」というようにコゼットの顔を窺う様子。コゼットは首を振って両手でその手を取りました。……なんか、将来が見えた気がしました。

 ところで、駒田テナルディエ、エポニーヌを殴ってなかったような。彼女をほったらかして、さっさと逃げようとしていましたね。ただし捨てぜりふのような「このアマ!!」がものすごく怖い声でした。嫌だなあ、あんな親……。
 そしてバルジャンは「どうしたぁっ!! 悲鳴を聞いた!」と、ものすごく必死の様子で駆け付けてきます。パパさん、愛娘の危機を知って歳も考えず猛ダッシュしたものと思われます。素晴らしい父の愛です。
 持つならこういうお父さんが良いですね。娘は大人になっちゃってるんだが(笑)


■ワン・デイ・モア
 エポニーヌがマリウスに触れようとして、出来ずに手を浮かせたままにしていたのが泣けました…。あ、この先数行に渡って続くであろう罵倒は自粛します。
 そして今回痛恨のミス。
 革命に参加することを決意したマリウスは、周囲の仲間たちの肩を叩いて周り、最後にアンジョルラスの肩に手を置いて「私は戦おう!」とそれはそれは爽やかな笑顔で高らかに歌い上げてくださいました。
 …それは良いんですが、「案外迷ってないんやなー」などと思いながらその様子を見ていたら、ジャヴェールのお祈りポーズを見逃しましたッ!!(アホ) ああああああ、私としたことが何ということ! この私がマリウスに…よりによってあの男に気を取られてジャヴェール様を見逃したなんて!!(オイ…)
 ちょっと真剣に落ち込みました。すまん、マリウス。


■バリケードを築く
 アンジョルラスに「恐れるな」と言われていた女性を、その後クールフェラックが慰めていました。見事な連携と言うべきなのか。原作クールフェラックは女好きだったよなあ、確か…ははは……。いやまさかこんな状況でどさくさ紛れにナンパはせんだろうけど、でもねー。こいつらって、アンジョルラスが片っ端から振りまくった女の子のおこぼれ、こっそり拾ったりしてそうな…(その辺にしとけ)。
 女の子には冷たいリーダーですが、「吠えるぜ、小犬も」にはクールフェラックをレーグルと一緒に止めた後グランテールを怒っていた模様。ほーう……。
 エポニーヌ。「心配してくれた…!?」と、驚いているようだったのが印象に残りました。……どーいうことだ、マリウス。心配する程度のことも驚かれるほど、お前は普段冷たかったのか。しかもせっかく彼女がこれだけ喜んでるのに、お前という奴はまるっきり気付かずに……(以下三行分ほど略)
 …エポニーヌはほんと、可哀想です。

 手紙を横取り(笑)したバルジャンは、盗み読みしながら「君の…恋人っ!?」とショックを受けた様子だったのがなんだか可愛かったです。うん、年頃の綺麗な娘を持つ父として、とても正しい反応だぞ!


■オン・マイ・オウン

 すみませんひたすら泣けました。笑顔がねえ、もう……この子はほんと、ぎゅっと抱き締めてあげたくなりますよ……(涙)
 背中を向けて立ち尽くす姿が、彼女の運命を暗示しているようで、何とも哀しいです。うっ……いや、ここで歩き続けずに立ち止まるのは、舞台の奥行きがあまり深くないからなんでしょうけど。そーいうことは言わないということで。


■バリケードのジャヴェール

 いやもう本当にアンジョルラスはすごい声(略)
 そして捕まっても一瞬凍りついただけですぐに堂々とした態度を取り戻すジャヴェールさんが素敵v ところでアンジョルラスって「縛って居酒屋へ連れて行け」を座って言ってましたっけ? 12日に観たときも「あれ?」と思ったのですが。
 コンブフェール。ジャヴェールの身体検査をした後、頷く仕草。さすがだ、どんな突発事態にも冷静だ副官! でも、身体検査ならあんな服の上からちゃっちゃっと触っただけでは駄目でしょう。ちゃんと裸に剥かんと。こういうのを「詰めが甘い」と言うんですよ。そんなこったから「子どもの遊び」とか一笑に付されるんですよ。あ、ひょっとして袖でやったん……(以下自主規制)


■恵みの雨

 エポニーヌ…マリウスに「生きてよ」と言われて驚いてます? マリウスに優しい言葉をかけられるのがそんなに意外だったのか!? マリウスお前ほんとに普段どういう態度を(自粛)
 で、それだけで本当に幸せそうに安らいだ顔になる彼女が本当に泣けるのです。ああ…(涙)
 泉見マリウスは助けを呼ぼうとしますね。そして、事切れた彼女を「嘘だろ、目を開けてくれよ!」って感じに何度か揺するのですね。これが泣ける! さらに抱き締めて泣き、アンジョルラスに慰められながら思い切りダンッと足を踏みならすのがとても印象的です。
 エポニーヌの死に対する哀しみと共に、自分に対する(だろう、あれは)怒りを見せるマリウスは彼だけですね。
 うん、泉見マリウスは「怒り」の感情がよく見えるんですよね。「マリウス」というキャラクターにはややそぐわないくらいの激しい感情なのですが、だから好きなのかも。
 アンジョルラス。グランテールと見つめ合い(睨み合い)は当然ですが、ガブローシュのことも見ていました。そして、エポニーヌが運び去られるとき、彼の肩を抱いて一緒に歩いていきました。あれってつまり、やっぱり舞台でもエポニーヌとガブローシュは姉弟ってことなのですか!? ああ、それにしても優しいアンジョルラスって良いなあ。


■最初の攻撃

 あー、鈴木ジャヴェールって本当に銃撃戦に動じないんだわー。素敵ー素敵ーかっこいいー!!(黙れっちゅーに)
 ところでバルジャンの「このスパイジャヴェール、任せてほしい」という言い方、微妙にジャヴェールを馬鹿にしているような言い方に聞こえたのは私の気のせいですか? あれはアンジョルラスたちに彼との関係を知られないための演技だったのか、それとも本心の発露か…いや前者だったと思いますよ信じていますよええ。
 そしてここは、常に背中に鉄板が入ってるかのごとくぴしっと立っていた(身体的にも精神的にも)ジャヴェールが、初めて姿勢を崩すシーン。ああもうあの動揺がたまりません。
 さらにバルジャンがいいですね!
 椅子に座って「それは違う」と言い、頭を振りながらナイフを叩きつけるように置く様子から、「どうしてなんだ、どうして分からないんだ、死なせたくないだけなんだ!」という気持ちがすごく伝わってきまして。
 もちろんジャヴェールは本当に理解出来ないんだけど、それでも彼が揺れてしまったのが分かるのですよ。ジャヴェールの強固さを揺さぶる力があるのですよ。すごい……!

 ………そしてそんな張り詰めたドラマの中、ふと見ると………彼らの横にあるテーブルの上に、鉢に入った人参2本とタマネギとジャガイモが………
 えーと、今夜のメニューは肉抜きカレーですか? つうか、何でこんなところにこんな普通は生で食べない野菜が置いてあるのですか? 果物とかなら分かるけど、何で人参にタマネギにジャガイモ…………誰が用意したんだこれ……?
 ものすごく気になりました……


■ドリンク・ウィズ・ミー

 グランテールが「過ぎた日に乾杯」と歌い出したとき、後ろのジョリたちが「お? こいつが歌うか?」みたいな顔をしていました。なんか可愛い。
 で、グランテールが革命を否定するようなことを言い出したのに対してジョリとプルベールがちょっとざわめき、フイイが後ろから止めてました。細かい。
 でも、グランテールは茶化していると言うより無謀なことをしている友人たちに怒っているような感じなのですね…。
 そしてアンジョルラスは…しゃがみ込んでグランテールの肩に両手を置き、俯いてました。ちまたで評判の「肩(または背中)に額こつん」まではやってたのかどうか確認出来ず。ちっ。
 しかし…、二日前と比べてえらく濃いぞ。グランテール役が違うからか?
 それにしてもコンブフェールはいつの間に上着を脱いだのだろう。


■彼を帰して

 マリウスよ、どーしてここでやたら勢いよく仰向けに寝るのだ……。しかも片膝立てて。泉見さんだとそれまでの演技の流れから「ふて寝」に見えてしまわなくもないんですが。これはどうも…いや、ありなんでしょうけど……うーん。
 あの、ところでアンジョルラスってここで何度か振り返ってたんですね。どうも、グランテールを見ているように見えたのは私だけですか?
 バルジャンの歌はしみじみと泣けます。歌いながら、必死で神様に懇願しているようです。「死ぬなら私を!」と言いながら自分の胸を叩いたり、本当に胸に迫る演技が最高ですわ。高音もしっかり保たせましたしね!(禁句)


■最後の攻撃
 マリウス、止めるアンジョルラスの手を振り払い、左手で相手の腕を押さえ、右手で足下を指差して「ここにいても同じだっ!」と叫びました。やはり怒りが見えます。ああ、なんか良いなあこういうマリウス。かなり真剣に好きかもしれん。
 バルジャンはマリウスを見て「任せろ、俺が行く」、アンジョルラスを見て「なにも恐れはしない」。細かいのう。
 そしてとにかく地面に倒れ伏して泣き崩れるグランテールが泣けるのです…!! バルジャン、止めるんならそんなアホな若造どもじゃなくてガブローシュを止めろー!! あの子があそこで一番若いんだぞ!
 坂元アンジョルラスは「死のう、僕らは敵など恐れはしない」がちょっとやけくそっぽく聞こえるのですが、しかし「世界に自由を!」の迫力がそれを吹き飛ばしてくれるのでした。
 そして最後は、立ちふさがったグランテールと一瞬見つめ合い、そのまま上へ。
 グランテールは伸ばしかけた自分の手を見つめ、倒れたマリウスを見つめ、アンジョルラスが撃たれた音にハッと振り返って後を追いました。
 いやあ、いろんなドラマが見えるなぁ。

 傷の痛みに倒れ込みながらも怪力は健在なバルジャンが素敵。今井バルジャンは説得力があるぜってしつこいな私。
 下水道に気付いてバリケードから飛び降りてくるジャヴェールも素敵。ここのジャヴェールの表情の変化は本当にすごいですね!
 多分、出来ることならバルジャンに死んでいて欲しかったのだろうと思うのですよ。それならここで彼らの縁は切れてしまって、これ以上揺さぶられることは絶対になくなるから。でもバルジャンの姿はなくて、下水道の入り口に血痕が見つかって、「あいつは生き延びた」ということを彼は悟らざるを得ない。その瞬間、彼は自分の末路を知ったような気がしてしまうのですよ!!
 いや、もちろん表層意識では「また逃げ延びたか、今度こそ捕まえてやる」と思っているのでしょうが、深層では……ふふ………ふふふふふ……自分の妄想でここまで喜べるようになったら人生幸せではあるよな馬鹿だけど…。


■食うか食われるか

 テナルディエさん…「ひゃはははは!」という笑い声が異様に怖いですよ……。
 うーん、駒田テナルディエだけは私、そばに近寄りたくないと思ってしまいますわ。本当にものすごく怖い人(ある意味ジャヴェールとかアンジョルラスよりも)に見える。
 ……しかし死体の下ろし方は結構丁寧でした。放り出さずにちゃんと抱えて下ろしてました。おや。
 一番印象的だったのは、このテナルディエは「この世は生き地獄さ…」というのを本当に心の底から本気で言っているように思えたことでしょうか。マリウスやジョリの死体を蹴飛ばして回ったりしてまして。
 これまで見た内、他の方は「小悪党が開き直ってうそぶいている」というふうに見えたのですが、今回は「ああ、この人、本気で言ってる」と思ってしまったのです。
 …過去になにかあったんだろうか。原作では確かテナルディエって兵役の経験があるはずだけど、そのときとか…(ちなみにそのときマリウスの父ちゃんと縁があったんだが、彼と逢ったのも死体漁りしてたときだし)。それとも宿屋を畳む羽目になったきっかけとか…いやむしろなにか悲惨な幼児体験とか…ああ一体なにが…。あ、いや、落ち着け自分。テナルディエにまで妄想を広げだしたら収拾がつかん。しかしすごかったのですよこの雰囲気が。
 ところで「バルジャン! バルジャンだ!」をかなり驚いている感じに言ってますね。こういう細かいところも違うのだなー。


■ジャヴェールの自殺

 さあ真打ち登場! 正直私、このシーンの後はおまけなんですよね!!(おいコラ!!)
 バルジャンの「またも職務の奴隷か!」が、怒ってるんじゃなくて、とにかく必死で頼み込んでいるように聞こえたのは初めてかもしれません。おお、新解釈!
  確かにこれなら「お前ついさっき『君の職務だろう、恨みなどない』とかえっらそーにほざいたんはどの口や!」というツッコミは出てきませんね! こんな腐れ外道なこと言ってるの私だけでしょうけど!
 ジャヴェールはその懇願から逃れたくて通してしまったように思えました。
 なんかね、このまま押し問答を続けていたら、バルジャンの目の前で彼は壊れてしまったんじゃないかという気がするのですよ。それだけは許せなくて、とにかくバルジャンが目の前にいることが怖くて、それで「よし」と言ってしまったのではないかと。最後の「24653」がいっそ悲愴に聞こえましたよ。また今井バルジャンは、ジャヴェールが壊れそうになったら助けようとしてくれそうだからなー…。
 そして、バルジャンの姿が消えた瞬間、彼の世界は崩壊するんですねー。自分の手を愕然と見つめ、あれだけ無表情だった顔がはっきりと歪み、あれだけ真っ直ぐ立っていた体がよろけて崩れ落ちる…。動きがそれほど大きくないだけに壮絶です。もうこっちが倒れそうです(黙りなさい)。
 さらにその後はほぼ無表情、動きも端正に戻ってしまうのがまたたまりませんわ。って私これほんとに何回書いたんだ。何回でも書くけど。
 背中向けて「どうして許せよう……」と言うのもいい。「先も見えない」から先をほぼずっと下向いたままで歌うのもいい。
 とにかく無茶苦茶素敵!! 最後の「辿る道もなーい!!」が本当にすごくて、一緒にセーヌ川に流されたくなりました……(ゴミの不法投棄はやめましょう)


■カフェソング〜バルジャンの告白

 マリウスくんが、「ああ友よ、訊くな!」から後を立ち上がってテーブルから完全に離れた位置で歌っていたのが印象的でした。あれ、マリウスってここでこんなに動いてたっけ? て言うか、元気だね随分と。
 そして泉見マリウスは、友に捧げるように杯を掲げてから飲むのがちょっとかっこいいのです。彼はこれでかなり成長したように見えるところが良いですね! いい男になれよ!!
 バルジャンの告白。
 マリウスは最初、唐突な人生話に「なにを言ってるんだろう?」という感じだったのですが、「あの娘のためには隠し通さねば」で「え!?」と言っていたようです。聞こえなかったけど、多分本当に言ってたのでは? 表情の変化がはっきり見えました。
 そして、「行かないで欲しい」で追いすがっています。
 うん…原作の展開を考えれば岡田マリウスが正しいんだけど、やっぱり好感度の点では圧倒的にこっちですねえ。バルジャンは彼の両手を取って頭を下げ、「約束を…!」と言うのですが、それに対する「誓います」がなかなか凛々しくてまた素敵。
 で、何より素敵なのは最後にマリウスをぎゅっと抱き締めて去るバルジャン……!! ああ、こんなバルジャンならマリウスは本気で「お父さん」と呼べるんじゃなかろうか。そーいえばマリウスってファザコンだった…(笑)。
 ええ、あれは本気でうらやましいですね。マリウスが。今井バルジャンのあの広い胸には、一度抱き締められたいです!(やめんか!)


■結婚式

 入って来るなりつまみ食いに走るご夫婦が素敵です。さらにマダムが思いっきりひっくり返ったのに笑いが。起こそうとした給仕長が、結構乱暴にスカートをひっくり返していたのがまた笑えました。
 マリウスの「化かせると思うか」。「しょーもない冗談はやめとけよ」みたいな口調に聞こえました。漫才のツッコミみたいにテナルディエの胸元をポンと叩いてまして、なんかほとんどエポニーヌに「なんだよ、ふざけて」と言ったのと同じノリ……? 変に軽いぞ、なんなんだマリウス。
 マダムの「金が先だ」いい声です。周囲に聞きとがめられて歌ってごまかし、さらに受け取った金を胸の谷間深く押し込んで「おしっ」とばかりに胸を叩く姿に客席爆笑。
 マリウスが「持ってけ!!」でばらまいた(投げつけるんじゃなくてばらまいてました……)お金もせっせと谷間へ。いっぺんやってみたいですねああいうこと。まあ、私のグレートプレーンズのような胸では絶対無理ですが……へっ、谷間なんて望むべくもねぇや、山がねえんだもんよ。
 テナルディエ。オカマの紳士の顔をハンカチでもってぺちぺちぺち。なんだ? なんか含むところでもあるのですか?(笑) その後、妻をくるくる回してアドリブダンス。支えられていない辺り、夫としてかなり命がけのアドリブであったと思われます。
 とにかく出てきただけで笑いの出ていたご夫婦でした。素晴らしい……!


■エピローグ

 バルジャン…ファンティーヌが登場した時点で既に力尽きたようにぐったり俯いてますね。ファンティーヌとのやりとりが、完全に臨死体験っぽいです。
 で、自らの死を知りながら「生きてみよう」と言うのが無茶苦茶に泣けるのです! コゼットの頬に手を添えて、「お前は愛した母が…」うわーうわー。抱きつかれて抱き締め返すのがもう涙涙……ああ、いいなあ……!!
 バルジャンというキャラクターが正直好きではない私ですが、ここはやっぱり胸に迫ります。バルジャンがようやく辿り着いた救いですしね!


■カーテンコール

 ジャヴェールさんが脱いでおいででした。……コート脱いだら細いですなー。バルジャンと並ぶと何か…いや、その、すっごく好み。体格差が良いです。
 そしてテナルディエ夫妻は出てきただけで拍手に加えて笑いが。素晴らしい。


 ああ、我が衝動買いに悔い無し。今井バルジャン&鈴木ジャヴェール、期待以上に素敵でしたわ!
 優しくて全てを包み込むような包容力のあるバルジャンと、人間離れして見える(いっそ職務そのものの擬人化に見える)ほどストイックなジャヴェールの、張り詰めた雰囲気が最高でした。
 今井バルジャンなら、ジャヴェールも抱き締められると思うんだ。バリケードで彼を逃がすとき、いっそやってみたらどうだバルジャン。ジャヴェールがその場で死にそうな気もするけど。
 そして、もしかしたら救えたかもしれない手をギリギリで振り払い、自分の世界を守るために死んでしまったジャヴェールが本当にもう(涙)。
 駒田&森テナルディエ夫妻はもはや言うまでもなく。素晴らしいの一言ですね! この人たち最高ですね!! 細かいところをいちいち挙げていられませんが、もう存在そのものがすごいです。

 以上、長々とお読みいただきありがとうございました。


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