ラ・カージュ・オ・フォール　　２０１８年４月２１日夜公演
梅田芸術劇場メインホール　三階C席

ジョルジュ：鹿賀丈史 ジャン・ミッシェル：木村達成 ジャクリーヌ：香寿たつき ダンドン議員：今井清隆 ハンナ：真島茂樹 メルセデス：大塚雅夫 フェードラ：美濃良 モニク：渡辺崇人 ロ・シン：富山忠 クロクロ：佐々木誠 ジャコブ：花井貴祐介 ムッシュ・ルノー：林アキラ

アルバン（ザザ）：市村正親 アンヌ：愛原実花 　 ダンドン夫人：森公美子 シャンタル：新納慎也 デルマ：高木裕和 オデット：土器屋利行 ニコル：附田政信 ビテル：松谷嵐 アンジェリク：白石拓也 フランシス：日比野啓一 ルノー夫人：園山晴子

　市村正親がお母さんをやる話ですよ！
　…いや、以前『モーツァルト！』でレオポルドを演じていらしたときにカーテンコールの挨拶で「次はお母さんの役です」とおっしゃっていてですね。観てみたかったのですよ。名曲『ありのままの私』も好きですし。
　有名な演目ですし、良い話ですね〜〜。
　基本笑えるのに、要所要所でしっかり泣かせてくれますよ。夫婦愛も親子愛もストレートにあふれていてすごく泣けます。
『砂に刻む歌』の、共に歳を重ねてきたふたりの深く穏やかな愛がじんわり染み込んでくる感じが大好きです。

■ジョルジュ（鹿賀丈史）
　とても愛情深い人という感じが素敵です。アルバンのこともジャン・ミッシェルのことも好きで好きでたまらないんだねえ、というのが実にストレートで、これがあるから彼らの家族は幸せだったんだろうなと思えます。アルバンがあそこまで堂々と「ありのままの私」を生きられるのは、ジョルジュあってのことだろうし。
　良い人だ〜〜。良い男だ〜〜！！
　倦怠期だの息子が馬鹿言い出しただのいろいろあっても、この人がアルバンを心の底から愛していることが全面的に伝わってくるおかげで「夫婦間の危機」的な意味での不安は全く感じませんでした。彼らの絆は小揺るぎもしそうにないですね。
　……いや、正直に言おう、分かったよあんたらがラブラブなのはもうよーく分かったから人前で臆面もなくいちゃつくのは大概にしろよ熟年夫婦め！（笑）
　しかしこれで「倦怠期」なんだったらそうじゃない時期はどんだけ（略）
　いっそ居間の壁に飾るように「比翼連理」とか「偕老同穴」とか書いた額でも贈ってやろうかとすら思いましたぞ。末永くお幸せに！！ 　たいへん微笑ましゅうございました。
　ジャン・ミッシェルの要求をなかなかアルバンに伝えられない辺り微妙に情けない感じもありつつ、どっちにも良い顔しようとしているわけではなくちゃんと息子を叱っていますしね。素晴らしい。良いパパだよ…。
　ところでシビルのことは本気で「一夜の過ち」で、愛していたわけでは全然なさそうですね。もし一時でも本気だったとしたら女見る目がなさすぎる気がするのですが、それはなさそうだから良かった良かった…。いや、そもそも気の迷いで子ども作るような真似しちゃダメだけど。ジャン・ミッシェルのことは目一杯愛してきたようだからまあ良いか。
　何にせよ、とても素敵でした。格好良いなあ。

■アルバン（市村正親）
　「女は女に生まれるのではない。女になるのだ」って、確かボーヴォワールが言ってたなあ……いや意味が違うのは分かっているんですが。マスカラの歌を聴きながら思いました。
　評判は聞いていたんですよ美しいと。聞いてはいたんですが……本当に美しいですねうわあ。
　あのスパンコールのドレスすごすぎる。何よりザザの圧倒的な存在感がすごいです。他の踊り子さんたちもめちゃくちゃ綺麗なんですが（どいつもこいつも妬ましい脚線美だぜちくしょう）、それでも登場すると空気が変わる！
　ああ、こういうのを「オーラが違う」と言うんですね。スターなんだなあ。
　初登場時にはあまりの可愛らしさに愕然としました。うおーうこちとら生物学的には生粋の女子だが完璧に負けたぜ！（笑）　はっはっは、マスカラどころか化粧自体まともにできん奴なもんで！
　いや、本当に美しくて可愛いです。
　そして男装（？）するとちゃんと格好良いのにしっかり無理があります！（笑）　逆に女物のスーツ姿が普通に女性に見える！　普段からちょっとした仕草がちゃんと女性なんですよね、すごいですねえ。としか言えないであります。
　母親としてもややずれてはいるもののすごく良いお母さんみたいですし。そう、母親ってのは子ども産んだら自動的になれるものじゃなく、子どもを愛してなるものなんですよね。自分で産んでも母親になれない人もいるし、そんなこと関係なくなれる人もいるんですよ。あなたは立派にジャン・ミッシェル君のママですよ、ややずれてるけど。（笑）
　『ありのままの私』、名曲ですね！　ああ、こういう場面で歌うのか…。
　そして、最初は泣きそうだったのにだんだん顔を上げ、胸を張って力強い声になっていくところが最高に格好良いです。ここまで言えるようになるまでに彼女が乗り越えて来たものをずっしりと感じさせつつ、その上に顔を上げて立つ誇り高さが素敵すぎる。ジョルジュは彼女のこういうところに惚れたのかなあ。良い女だなあ！

■ジャン・ミッシェル（木村達成）
　かわいい。（笑）
　何だこの全身から漂ってくる「愛されて育った子」感。そうだよ君の両親は最高だよ。
　言っていることは気持ちは分からないではないにしても随分と非道で身勝手なんですが、自分がどれだけ酷いことをしようとしているかはちゃんと自覚はしていそうでしたしね。これで自分のことしか考えていないバカタレだったらもうパパさんはぐーでどついて良いところですが、叱られるまでもなく罪悪感はありそうだったのでまあ許す。
　愛するアンヌとのことで彼もそれなりに悩んだ末だったのかな。
　というか、自分を母親として育ててくれたのが誰かくらい、子どもは分かりますよね。ジョルジュもアルバンも愛はストレートに表現する人のようですし。まあ、シャツが欲しいと言ってブラウスを与えられたら、そりゃその趣味のない男子は困惑するでしょうけども。アンヌにも両親を自慢していたようだし、ちゃんと愛しているし愛されていることも分かっているんですね。「ママ」にじーんと来ました。
　…しかし、女の子とバカンスに行って帰ってくるなりその相手とは別の女の子と結婚するってのはどういうことだ。他にも結構大勢ガールフレンドいそうだったね？　アンヌ含めて三股くらいかけていてもおかしくない感じなんですがどうなんですかその辺。結婚決めてからちゃんと全員と話はつけたんだろうな、ダンドンさんのことが解決した後、全然別方向から泥沼トラブルが湧いて出てきても知らんぞ。本当に大丈夫か。
　と言うかそもそも、アンヌ嬢は彼の女性遍歴を知っているのでしょうか…。
　アルバンはどうして彼が「女と」結婚することに驚いていたんですかね。どう育てたつもりだったんだ？
　個人的に、同性愛は個人の自由だけど女癖が悪いのは確実に傍迷惑なので、後者の方がまずいと思うのですが。

■アンヌ（愛原実花）
　かわいい〜〜！　なんて良い子なのー！！
　見た目だけじゃない本当に良いお嬢さんですね、ジャン・ミッシェルは見る目があるぞ！
　彼女がいれば今後のジャン・ミッシェルと彼の家族は心配なさそうですね。これだけ愛らしくもしっかりした彼女なら、お父様もいずれはちゃんと説得できるのではないでしょうか。すでにお母様はこちらに付いてくれているようですし。
　しかし、清楚で純真そうで、お堅い家のお嬢様なのに、あのショーに堂々と…度胸もあるのか、すごいな。アルバンに張れるくらい良い女なんじゃないですか本当に。ジャン・ミッシェル、君は本当に見る目があるから絶対にくだらん目移りをして彼女を放したりしないように！　まあ、あの感じなら大丈夫ですかね。

■ダンドン夫妻（今井清隆・森公美子）
　保守的って言うかあのインテリアを喜ぶ趣味はちょっとどうなんですか議員様。（笑）
　居間にあんなでっかい十字架のある家、本当に嬉しいか…？
　ところでジャクリーヌさんはダンドン氏をどうやって丸め込ん…じゃない説得したんでしょうか、ふたばが「追い詰められた人間は何でもやるわ」と言っていましたが、もうあれ洗脳じゃないの…（笑）
　奥様の方は結構理解ありそうですし、亭主に逃げ場はないと見ました。「良い話」とか言っていらっしゃいましたし。ショーでもノリノリでいらっしゃいましたし。あの母なる大地のような限りなく豊かな胸は披露する価値があると思いますが！　多分魅了される観客多数ですよ！
　旦那は…ええと、なかなかに衝撃的……いやその、でもこういうのってどんなに少数でも需要はあるっていうしなあ？
　ええと、ちょっと今後のダンドン家が心配ではありますが、でもまあ外堀は埋め立て完了、内堀もほぼ埋まっちゃってるから落城は目前ですかね。
　いや、真面目な話、議員閣下も勇気を持って偏見を打ち破れば、新しい自分が見つかるかもしれませんよ？　まあ無理に見つける必要は全然ないんですが、大丈夫、いずれにしてもご家族は理解ありますから。

　以下思いつくままに箇条書き。
◇プログラムの表紙が強烈です…黒地にショッキングピンク…（笑）　ああそうか、麗しのスター・ザザ嬢ならきっと、この色だって着こなせる！
◇ショーのシーンがすごすぎる！！　いやあ本当に皆さん目もくらむほどにお美しい。あと歌もすごかったです！　つーかこれいつの時代設定だミニスカセーラー服……（笑）
◇ツッコむまでもないことだと思いますが、ジャン・ミッシェルの策ってそもそもかなりダメなんじゃ…。ダンドン議員と両親を引き合わせるときだけごまかしたところで意味はないのではないでしょうか。アンヌと結婚したら普通に考えてそのご両親との付き合いは続くわけだし、間違いなくすぐにバレますよね。アンヌがジョルジュたちの家に同居するとしたら、その日の内にも気付かれるのでは？　少なくとも、本当は「母親」がいないことは確実にすぐ分かりますよね？　顔合わせのときには両親だけごまかして、アンヌには後からちゃんと説明するつもりだったのかもしれないけど、そこで彼女が理解してくれなかったらどうにもならないのでは？　最悪自分の家族に取り返しのつかない傷を残しかねないくらい酷いことをやった割に、効果は良くてその場しのぎでしかないんですが。こいつ、相当浅はかなんじゃ、と、やや心配になります。アンヌちゃんはしっかり手綱を取ってやってください。
◇「男のレッスン」の大層むさくる、いやその暑苦しい男ダンス…ええと、ああいうのが「男らしい」んですか？　私にはよく分からないであります。あと後ろの方でノリノリになっていらっしゃる女性がいましたね。
◇アルバンとダンドン夫人のあの妙な仕草はアドリブ…ですかね？　議員が笑っちゃってましたよ、おいおい。（笑）　奥様やっぱり相当ノリの良い方ですのね。
◇ジャコブが可愛すぎる。良いじゃんメイドで。…あのやりすぎなボーイ（？）の衣装、どこから持って来たんでしょうか。カツラまで。保守的通り越してアンシャン・レジームなんですが。ひょっとしてショーの衣装とか？　まあ、何にせよ夢が叶って良かったですね。
◇結構周囲のみんなに愛されてるなあ。むしろ全く理解のないダンドン議員が孤立状態なんじゃないかというくらい、皆さん理解があるみたいですし。ジャクリーヌさん達を始め、男のレッスンに付き合ってくれるマッチョなお兄さん方とか、良い人ばっかりだー。
◇ラストの愛の歌が本当にじんわりと泣けます。美しいなあ。ああ、良いなあ。本当に良い話だなあ…と。
◇カーテンコールで、踊り子さんたちがショーの衣装を素早く脱いで男装（？）になっていくのが格好良い！　この人たち、本当にすごいですね。

　とにかく熟年夫婦の深い愛に素直に感動できるし、かつ笑えるし、ショーには見惚れられるしで楽しかったです！
　カーテンコールで思いっきりスタンディングさせていただきました。一階席の前の方は総立ちだったような。これは立ちますよね！
　ラストで主人公ふたりがしっかりと抱擁していたのにまたジーン。いいなあ…！ 　 　


　お読みいただきありがとうございました。


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